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兎月の身体から力がフッと抜ける。緤呀は、抵抗のなくなった兎月から、意図も簡単に衣服を取り去った。
「教団に送られたもの達が神に使え、祈りを捧げるために帰って来られないと思ったか?
違うよ。
君みたいな生け贄は俺達、教団の収入源に過ぎない。
何故、送られたもの達が帰って来ないのかなんて解るだろう?」
淡々と話す緤呀の言葉を茫然と聞いていた。兎月は、身体を隠すように抱きながら震える口を開いた。
「…じゃあ…僕の町から連れて行かれた。
黒騎〈クロキ〉や壱南〈カズナ〉は…」
緤呀は、目を細めてわかっているんだろう?と兎月の髪を弄ぶ。
「生け贄には、躾が必要だ。だから、俺みたいな調教師となる団員がいる。
俺は、そいつらの担当じゃなかったが良い声で啼いてたみたいだよ。
だから、遠方貴族に高値で売れたらしいなぁ」
「ウッ…ウワァァァァン…アッ…アッ」
兎月は、目を見開いて泣き出した。
何も知らない町の人達は、騙されながら此処に送っていたのだ。先に来た黒騎達は、何を思っていただろう。そう思うとボロボロと涙を溢した。
「他人のことを考えるなんて余裕じゃないか1125。
お前も同じ立場にいることを忘れているんじゃないか?」
兎月の身体がビクリと震えた。
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