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【Side-AL】
ここは、エーゲ国の少し外れにある少し小高い野原。その頂上に少年は立っていた。
少年の金色の髪は少し長いからか風に気持ち良さそうに靡いていた。
歳は15、6といった所であろうか、頭以外をすっぽりと覆い尽くした黒いローブも、やはり風に靡いていた。
少年の前には大きな黒い慰霊碑が立てられていた。職人によって削られ慰霊碑は太陽の光りを浴び眩しいぐらいに黒光りしていた。
端から見れば、この光景は珍しいものなのであろうが彼は毎日の様にここにきてこうしている。
AL「お父さん、お母さん……行ってくるよ……」
少年は指で石碑をなぞりながらそういった。
その声はどこか悲しそうで今にも潰れそうな割れ物の様なものだった。
少年は、手に持っていた花束を石碑の前に置き立ち去ろうとすると横から声をかけられ顔を上げる。
Priest「今日は、もう良いのかね?」
顎に白髭を貯えてた、初老の神父様であった。
AL「はい。今日は、入学式ですから」
少年は頭を少し下げ一礼をしながらそう言った。
Priest「そうかそうか……今日から学園生かの……。ということはあまりこれからは、ここには来れないですね?」
AL「はい、僕は学園寮に入りますから」
Priest「ふむ……。アルカディールの加護が有らんことを。良い学園生活を……」
AL「ありがとうございます。神父様」
少年は、神に祈る様にその場に屈み込み、少年は立ち去る。
残された神父は彼が見えなくなるまで見送り、彼が見え無くなると神父は振り返り少年が見ていた慰霊碑を見る。
Priest「彼もまた、君達と同じ道を進むのかと少しドキドキするよ。年寄りの生き甲斐じゃわい……アルカディールの名を持つ者……」
神父は、慰霊碑に向かってそう言った後空を眺めていた。
神父の言葉が虚しく風に持って行かれる。世界はどう回ろうと常に進み続けている。だからこそ、時間は止まりもしないし戻りもしない。
だからこそヒトは選ぶ事が出来るのだ、それぞれの人生という名の道を……。
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