医者

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(もうぐずぐずしてられない。) 紗智は慌ててその場から駆け出した。 総司の部屋へ戻り、自分の風呂敷を乱暴に広げる。 紗智は不安な顔で一つの缶を取り出した。 中には大量の薬が入っている。 紗智がいた時代から持ってきた物だ。 (私が来てから二年…薬の使用期限は状態が良くて二、三年。) これを使う時が来てしまった。出来れば使わずに勘違いであって欲しいと何度も思っていた。 紗智は薬の入った缶を強く握り締めた。 表情は固い。 (大丈夫、きっと治せる。) 紗智は目を瞑り、自分に言い聞かせ、深呼吸をする。 (総司を死なせたりしない!)
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