茉莉沙編・夕焼け小焼け

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「……なにこれ……」   明治初期の横浜を思い出すヨーロピアンな建物の並ぶ街並みを見渡し、次に綺麗に整備された大通りを行き交う人々を眺める。 獣耳とか角のある人が目立っているし気になるけど、普通の人間が圧倒的に多い。 コスプレイヤーって奴?派手で変わった恰好をした人もちらほら。   「嬢ちゃんあぶないよ!」   声が聞こえて、そちらを見ると、荷物が乗った荷車を、馬と同じ位の大きさで毛がふさふさした動物が牽いている馬車?が走ってきた。 慌てて避けると、はふはふ鳴きながら真横をその生き物は通り過ぎて行った。   そういえば、女の子がトンネルの先の不思議な世界に入って、そこの湯屋で働くって映画を小学生の時に見た。 あの女の子の気持ちだ、例えるならば。   「呼んでいる~胸の何処か奥で」   映画のテーマソングを小声で口ずさみ、平安時代みたいな服を着た、おかっぱ頭に助けられるのかなぁ……と思った。 その時、   「クリスちゃん。何してんだい。こんなところで」   肩を叩かれ、振り返ると、白銀の虎が服を着て、後ろ足二本で立って、いた。 怖い、恐い、逃げたい、でも動けない……   「ありゃ?人違いか。怖がらせたみたいだが悪かったな」   「……は…はい……」   喋ってるっ! 虎が喋ってるよぉ 悪い虎じゃ無いっぽいけど怖い!   「お前フバースを見た事無いのか?」   フバース? なんだそれは。 あたしは聞き返した。   「幻獣界メイトルパに棲む種族だよ」   「めーとるぱ……メープルシロップの類い?」   「……お前、召喚獣か?」   「は?ナニソレ」   目の前の虎は順を追って説明すると言ってくれた。
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