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私はユウノの近くに歩みより、
「ねぇユウノ。パーティーサボりたいってミーアとお母様にいっといて」
と、耳打ちした。
ユウノは何か言いたそうにしているけれど、私は彼女からはなれ、外を見た。
「あと1週間でしょ?この家に居るのも……だから、だからねっ!え~っと……」
やっと口を開いたユウノは一生懸命ミーアに教わっただろう事を言った。
私付きのメイドのミーアはそばかす顔に、ウェーブのかかった胸までの髪。性格は真面目で職務熱心、若いのにおばさんみたいに人の一挙一動に一々文句をつけ、最近はユウノを自分の子分みたいに扱う。
今日は伝言の仕事のようだ。
いつもミーア言う事は似たり寄ったりで内容の予測がつく。だから私は外を見ながら、遠くの通りに行き交う人々を見ながら、言う。
「“最後くらいお母様のお喜びになることをなさい”でしょ、ユウノ?私が“サボりたい”って言ったらミーアがこう言うように言ったんでしょ?」
「うん!それ!」
……やっぱり。
もうすぐ蒼の派閥の任務で港湾都市ファナンに向かう。
当分帰れない。
だから、“あと1週間”で“最後”なのだ。
「どうせ家にいてもお姉ちゃんはテラスでぼうっとしているだけだから暇でしょっても言ってた」
……ミーアの奴
人の事をそんな風に影で言ってたのね。
なんでユウノもそんな事はきっちり覚えてるのよ。
「クリス~っ!お~い!」
不意に庭の方から声がした。
ユウノと二人で外を覗く。
蒼の派閥の同期で“成り上がり”トリス。
明るくて、話しやすくて、(勉強はよく召喚師認定試験に合格したなって思うくらい出来ないけど)いい子。
「トリス!?どうしたの?」
私が聞くと、トリスは大きく手を振りながら、
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