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「へえ、奇遇だね」
えへへっと笑うと、美佳が私を大きな目で見た。
「前にぶつかったのもすずだよ」
呆れているような口調に、うっと何も言えなくなる。
「………なんでぶつかったこと知ってるの」
こっそりと横目で聞く。
「珠実から聞いた」
「……珠実め」
くすりと笑う美佳。
「前は見て歩かないと、転げ落ちるよ」
それはそれで見たい気持ちもあるけど、とイジワルな一言を加えるところが美佳らしい。
「ぼうっと突っ立ってた俺も悪いから」
可愛らしい顔立ちに似合わないくらいのハッキリした物言いに少し怖じ気づいたのか、メガネくんは美佳に困ったように笑いかける。
「ま、それもあるね」
美佳はメガネくんを見上げ、にっと笑った。
「あたしがぶつかったわけじゃないから、どっちでもいいけどね」
美佳は私の方を向くと、帰ろう、と笑った。
こっくりうなずくと、メガネくんの脇を通り過ぎる。
「バイバイ、また明日」
メガネくんは私たちに遠慮がちに手を振った。
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