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「おはよう」
朝、チャイムが鳴ると同時に教室に入る。
「おはよう」
席に着く前に、珠実と美佳に挨拶をする。珠実は朝練があったのか、机に突っ伏しながら片手を挙げた。走り込みだったのかな……バスケ部は大変だね。
私は段々と窓際に近づく。美佳は窓際前から3番目の席で、窓の外を見つめていた。
私は窓際のひとつ隣、美佳のななめ後ろの席に座る。
「美佳っ」
あれ、聞こえてないのかな。もう一度呼んで、美佳はやっとこちらを向いてくれた。
「あ、すず」
美佳は何かを言おうと、私に椅子を引きずって近づいてきた。でも、先生がやってきてしまったので、戻っていった。
ふと先生の方を見ると、教卓の前ののっぽな学ランが目についた。後ろの席の人は黒板見にくいだろうなあ、とじろじろ見る。
(……メガネくんだ)
先生の声が彼の名前を呼ぶ。
「黒沢壱太」
「はい」
明朗な優しい声。
くろさわいちた、か。
「ふーん」
私は大きなあくびをした。
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