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「あー、すず、何で破っちゃうの」
ぷくーっと頬を膨らませて、美佳は私をにらんだ。
「筆跡鑑定してみたかったのに」
私はえへっと笑った。
「つい、ムカついて」
グシャグシャと破った紙を集め、ゴミ箱に捨てるために席を立った。ざわめく教室のドアが開いて、珠実が戻ってきた。
「どこに行ってたの?」
美佳は表情を変えて、私の席に座った珠実に笑いかけた。私はゴミ箱から二人のもとへと戻る。
「トイレ」
「長かったね」
私が自分の席の前の椅子に腰掛けると、珠実は混んでたの、と笑った。
「そういえば、美佳、話題の人物になっちゃったね」
珠実は背もたれに体重をかけ、腕を組んだ。
「トイレでも、噂されてたよ」
「なんて?」
美佳は身を乗り出した。
「ずるいって言われてたかな? あとは、諦めないで誘えばよかったー、とか」
ほっと胸をなで下ろす美佳を見て、珠実は眉をひそめた。
「何かあったの?」
美佳はぶるぶると首を振って、笑った。
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