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「雨だねー」
文化祭まであと15日。窓の外を見ながら、美佳がつぶやいた。
「今日傘忘れたよ」
珠実が面倒くさそうに髪をかきあげた。
「天気予報は晴れだったもんね」
私は2人の間でくふっと笑った。
「私は持ってきたもん、傘」
「すずはいつも鞄に折りたたみ傘入れてるもんね」
珠実は私を見て優しく目を細めた。
「貸しなさいよ」
美佳はやけに真剣な声で言う。
「ヤだよ」
ケケケッと笑うと、美佳に頭をぐちゃぐちゃにされた。ただでさえ雨の湿気でまとまらなかった髪が爆発した。
「私くせっ毛だから直らないのにー」
美佳がポケットから鏡を出して私に手渡す。受け取って鏡の中をのぞくと……想像以上に飛び跳ねた髪型。美佳を盗み見れば、笑いをこらえて口を押さえている。
「クッ」
押し殺した笑い声が聞こえて振り向けば珠実まで! ヤマンバみたいな私にしたのは美佳なのに。ぶうっとふくれる。
「葛西」
そんな中、美佳を呼ぶ森屋くんの声。見ると、教卓の位置からこちらに笑って小さく手招いている。
「何?」
美佳は一瞬肩を震わせ、笑顔で森屋くんに一歩近づいた。
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