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今、この空は梅雨を迎える。
どんよりした日々は、学校の中も湿らせる。
「雑巾がけしても滑るよね」
キュッキュと上履きを鳴らしながら廊下を歩く。白い廊下は、連日の雨のせいで水気を帯びていた。
「気をつけて歩きなよ」
「すずはどんくさいもんね」
「余計なお世話」
ニヤニヤとからかってくる2人に、つっけんどんな返事。だって、暗に転べと言われている気がしたんだもん。
「すずが可愛くなぁい」
理科の教科書を抱えながら、美佳が珠実の肩を叩く。
「まぁ、下ばかり向いて誰かにぶつからないようにね」
足下ばかりを気にする私に、珠実はアドバイスした。
「……うん」
相変わらず足下を見やる私に、珠実は苦笑い。つられるように美佳も笑った。
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