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「彼氏欲しい……」
お昼休み終了のチャイムが鳴る少し前。トイレから戻ってきた美佳は、よろよろと私たちに近づき、そうもらした。
「いきなりどうしたの?」
テンションの低い美佳は、久しぶりに見た。
「今月末に文化祭あるじゃん……終わった後、校庭でフォークダンスするんだって」
珠実はへぇ、と相づちを打った。
「でね、そのダンスの相手を決めておかなきゃいけないんだって!」
私は意味が把握できずに首をかしげる。
「だから、男の子と1対1で踊らなきゃならないわけ! この学校は女のほうが10人くらい多いから……男子を捕まえられなかった女子は女子と踊らなきゃならないの!」
せっかくのイベントを女と踊るなんてもったいない! 美佳はため息をついた。
「だから最近、目を付けていた男子に彼女が出来始めたのね……気づくのが遅かった」
私と珠実は美佳の肩をたたいた。
「珠実はいいよねー、先輩と踊るんでしょ?」
珠実は、ははっと笑った。数日前、珠実は部活の先輩に告白され、今では先輩の「彼女」になっていた。
「頑張って男ゲットだよ、すず!」
急にこちらを振り返った美佳は、私の手を握った。
「じゃあ森屋くんを誘ってみるか」
いつの間にか元の様子に戻った美佳は、無謀にも森屋くんをパートナーに選ぶらしい。
「森屋くん」
美佳が森屋くんに話かけたとき、私は周りからの痛い視線を感じた。
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