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森屋くんは教卓の周りで、メガネの男子と楽しそうに話していた。
「何?」
その楽しそうな顔のまま、美佳を見やる。
「文化祭のダンスの相手決まった?」
直球だな、と、美佳のはっきりした口調に尊敬を覚えた。
「まだ、だけど」
何のことだかわからないのか、森屋くんはメガネくんと目を見合わせていた。
「じゃぁあたしとペア組んでよ」
美佳のその言葉に、教室中が殺気立った。
「別に、いいよ」
森屋くんのその言葉に、怒涛のような誘いの波が起こった。
「やだ、じゃぁ私と踊って!」
「美佳じゃなくてもいいでしょ?」
私も私もと、森屋くんに女子の声が群がる。私はその勢いに後ずさりした。それは森屋くんたちも同じようだったけど、逃げられたのはメガネくんだけだったみたい。
「大変だなあ」
つぶやいた言葉は、ワントーン低い声とダブった。
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