綺麗な箱

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どうしても開けられない箱を 何故かは分からないけど、 ずっと大切に持っていた。 鍵もない。 もちろん 鍵穴も錠前もない。 開け方も分からない。 何が入ってるのかも知らない。 その綺麗な大切な箱は、 堅く堅く閉ざされていた。 でも、 何かとても大事なものが入ってるような気がしていた。 とてもとても大切な、 とてもとても貴重な、 とてもとても価値のある、 何かが。 本当の中身は分からない。 その箱は とても美しくて、 魅力的だった。 その箱さえあれば、 何もかも満たされた。 そこにあるだけで、 他には何も必要ないように思えた。 それ以外のものを 求めることもなかった。 大切な大切な、 美しい箱。 だから、 その箱を捨てることも、 壊すことも出来なかった。 だから、 ずっと大切に持っておくしかなかった。
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