いつかのどこかのエピローグ

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=== 丁度その頃。 定期健診と言う名目で病院に呼ばれた俺は、医者からある事実を聞かされた。 それは、記憶に関すること。 俺は事故にあう前のことをほとんど忘れてしまっていた。 今更ながらに考えてみると、俺はどうして自分が入院していたのか知らない。 街並みが変わってしまったように思えたのも、自分の家がよく思い出せなかったのもそのせいだと医者は言った。 実感なんかまったくない。 淡々とそれが事実であるという前提を突きつけられたうえで、俺はただその作り話のような現実を聞かされ続けた。 家に両親がいないのも記憶喪失のせいということだった。 変に記憶を刺激すると脳に負荷がかかるとかなんとかで、深夜俺が寝ている隙に食糧などを補充して極力会わないようにしていたらしい。 そんなこと知る由もない俺は、ただのうのうと過ごしてきただけだったが。 でも、そうまでしてくれていると知らなかったとはいえ、そんな両親の顔を思い出すことすらできないことに今更になって気づいた自分が、どうしようもない冷めた人間に思えてならなかった。 そして最後に、医者は言った。 俺の記憶は、もう戻らないかもしれないと。 事故にあった俺は頭を強く打ちつけていて、脳に軽い障害を負ったらしい。 外傷的な傷はないため、医者も手の施しようがなかった。 だから、両親と相談して様子を見ようということになった。 気づけばもうこの病院を退院してから半年以上の月日が経っている。 記憶が戻る可能性はまだなくなったわけじゃない。 でも、今の俺の精神面から考えても、不用意に戻さない方がいいだろうというのが医者の考えだった。
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