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何も入っていない鞄を掴むとどたどたと階段を下り、きっと母さんが愛情こめこめ作ってくれたであろう朝食を涙をこらえて諦め、ジャムを塗ったパンだけくわえて、
「ひっへひはふ!!」
と元気よく奇声を上げると、玄関を出ました。
この間わずか五分!!どん兵もびっくりです。
玄関を出てすぐ、うちの塀に寄りかかりながら鼻歌なんか歌っちゃってる海春を発見。
その姿はまさに絵画に出来そうな勢いです。
「ほへん、はっは~?」
「優羽ったら、ちゃんと食べてから話さないと何言ってるかわかんないよ」
急いでパンを口に押し込む僕です。
その様子を微笑みながら見ている海春。
「ほら、ジャム付いてるよ?」
そう言うと海春は人差し指で僕の頬を拭いました。
そしてそれをぱくっとくわえてしまいます。
「………」
僕が呆然としていると、海春も自分がしたことをようやく把握したようで、今朝以上に顔を赤くすると
「は、早く行こっ」
と言ってすたこらさっさと行ってしまいました。
無意識にあんなことをしてくる海春には幼なじみの僕でさえ毎日のようにどきどきさせられることもしばしば。
海春に追いつくといつものように並んで学校へと向かうのでした。
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