ご法度

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 ――始まりは強く日の照る真夏日だった。  中学2年生だった羽生恭(はにゅう きょう)は、高校見学のために数人のクラスメイトと「暑い暑い」と小声で文句を言いながら、佐南(さなみ)高校の校門を通り抜けた。  2年生になったら見学に行く、という恭の中学校にある一種の行事のようなもので、面倒くさいと思いつつも貴重な夏休みの1日を使ってここに来たのだ。 「オレは皆さんの見学の説明をする、生物教師の松雪東(まつゆき あずま)です。よろしく」  受付に現れた男性はそう名乗り、細かい注意などを述べながら校舎内を案内し始める。 「ね、松雪先生カッコ良くない?」  恭と一緒に来た女子はそんなことを言いながら松雪の後を歩き、そわそわと教室を見回している。  松雪は若く整った顔立ちの教師であるため、そう思ってしまうのも頷ける。
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