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女子の声をよく分からない返事で適当に流したのは、恭にそんな話を聞いている余裕が無かったため。
恭の目線の先にいたのは、松雪の隣で画用紙をまとめている……菅原だった。
皆がただ思っているような"格好良い"だけではなく、彼の存在に見入ってしまったのだ。
外見、声、話し方、雰囲気……恭の脳は一瞬でそれらを焼き付け、そしてある1つの感情を覚えた。
それは3年経った今でも変わらずに、色濃くなって恭の心の中に残り続けている。
―*―
「あの、先生! 私、菅原先生のこと……っ」
教師と生徒の恋愛がご法度なんて分かっている。
生徒である羽生恭よりも、彼女の目の前にいる男性教師の方が知っているはずだ。
シンとした美術室に響いたのは、佐南高校2年生である恭のそんな声で、それは最後まで紡がれることなく途切れた。
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