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「何より下田は四方を海に囲まれておるから、迂闊に上陸は出来ぬ。一旦、外浦に出て上陸を計るべきであろう」
元親は、自身の構想を盛親に打ち明けた。
盛親はなるほど、と言う表情で元親を見る。
「ならばそこの須崎半島を迂回するわけでございますね」
「九鬼が西より上るなら、我らは東より挟撃にかかれば良い。北には、陸よりの先鋒軍がおるから、まさかそちらには逃げまい。そして脇坂殿が海上よりの圧力
・・・これが“天下”、か」
元親はかつては抗う者であった。
だが“天下”に服従して以来、自分の思い通りに全てが行かない。
さらに“天下”に自身の溺愛する息子を殺された。
この憤りを、憂いを、何処へ向ければ良いのか。
向いた先が吉良、比江山であり、親和、親忠であった。
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