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今日は来ないと思ってた。
だから私は余計に浮かれたんだ。
今日は私がそばにいたら見てくれる?
化粧では誤魔化せない若さと、あなたに対する愛情だけは誰にも負けない。
どんな角度がより色っぽく見えるのか。
どうしたら可愛さをアピール出来るのか。
私が一番良く知ってる。
好きな食べ物も、舌を出して唇を舐める仕草も、怒る一歩手前の表情だって
私は幾度となく見てきた。
画面の中のあなたを。
だから努力した。人付き合いが苦手な私が、糸のような人脈から広げてここにたどり着いた。
たとえすぐに切れてしまうかもしれなくても。
そして、歓喜に暴れだしそうな興奮を抑えて
専属スタッフ。の一員。
のアシスタントになったのだから。
特にする気はなくともトイレを済まして出た。
すぐに戻ったけど撮影は続いていて
だけど私に仕事はなかった。
見て盗むのがこの仕事の教えだから、何もすることがないわけじゃない。
することは山のようにある。
彼が笑うのを見ること。聞くこと。脳裏に焼き付けること。
トイレに行ったのに、自分の携帯を録音モードにしなかったことに
怒りを覚えた。
馬鹿でどうしようもない私。
目の端で先輩を追うと、鏡を指差した。
慌てて手にとり、走った。
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