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そしていつしか少女が九歳となった頃…
「―――、何をしているんだい?」
「あ、お父様」
少女が机で何か分厚い本を読んでいるところに、父親が話しかけました。
「これは…」
「物理学についての本です。使用人に頼んだら書斎から持ってきてくれました。」
少女が物理学だと言った本は、大の大人が読んでも到底理解できないような、難しい本でした。
「…内容は理解できているのかい?」
「もちろんです!!それに、私なりの理論も考えました。」
ほら、と言いながら、少女は机の上にあった紙を近くに持ってきました。それにはびっしりと数式やら文字やらがかいてあり、父親は我が子ながらも、少女に恐怖を覚えました。
九歳にして科学者顔負けの理論を組み立ててしまう少女。父親はこのときに気づいたのです。自分の子供がおぞましい才能をもっていることに。こんな子供、ただの末恐ろしい子でしかない。父親の体はぶるりと小さく震えました。
「お父様?どうしたのですか?」
「い、いや…なんでもないよ…」
「そうですか。なら良かったです。」
少女は屈託なく笑いました。しかし今の父親には、この光り輝く少女の笑顔さえ、悪魔の微笑みにしか見えません。
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