童話 愚か者

6/10
前へ
/203ページ
次へ
少女と父親は仲良さげに手を繋いで家を出ました。季節は冬、吐く息が白く幻想的です。 「ところで、―――はプレゼントに何が欲しいんだい?」 「…実は私、プレゼントは特に欲しいものがないんです。」 「そうなのか?」 「はい。…ただ、買えるものではないのですが、欲しいと思うものはあります。」 「…なんだい?」 「それは…」 ―お父様とお母様と、これからもずっとずっと一緒にいられる未来― 少女はそう言おうとして口を止めました。はっと気づいて周りを見渡せば、そこはいつも少女がくる街ではありません。薄暗く、人っ子一人通らないような道です。 「…お父様?ここはどこですか?」 「…」 父親は無言でした。  
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加