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冬太は、中学の頃には、それなりの成績を修めた選手だった。
当然、入部当時から、周りも彼には一目置いていた。そして、冬太もそれを知っていた。
しかし、だからこそ。周囲の期待の目が、羨望の目が、小出に注がれるようになっていくのを、彼は我慢できなかったのだ。
それからというもの、冬太は頻繁に部活動を休むようになった。
それまで真面目に取り組んできた彼だから、休むと余計に目立つ。
自然、注意されることも多くなる。
それがまた、冬太には余計煩く感じた。
「小出が寂しがってたぞ」
そう言った部長の言葉さえ、冬太にとっては厭味に聞こえる。
橙のスキーウェアを着た小出が冬太に気付いた視線を、見ないふりでそらして、無視を決め込んだ。
そういう行動がまた自分をみじめにさせるのを、冬太はわかっている。
けれども、何事もなかったように小出と談笑する気にも、なれなかった。
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