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 屋根からの落雪音が、降雪量の大きさを語る夜だった。  消雪の水音は、家の中にいる者の鼓膜を絶えず刺激する。  火を消されたストーブの独特の臭いが、暗い部屋に充満している。  寒くはない。  部屋の隅に置かれたストーブの暖気が、火を消してもなお残り、ゆるやかに室内を守っていた。  敷き毛布のふわふわとした感触と、傍らで横たわる祖父の体温が、心地よく冬太(トウタ)の眠気を誘う。 「じいちゃん、おはなしして」  そういう部屋の中で、冬太はいつものように寝物語をせがんだ。
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