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こうして声を出してみれば、吹雪の音も、屋根から落ちる雪の音も、こういった夜に何となく感じる心細さも、幾分か和らぐようだった。
他に聞こえる音のない部屋は、幼い冬太にとって、無条件に安心できる類の空間とは言い難い。
それを知ってか知らずか、共に眠る祖父は、冬太がせがめば必ず何かしらの寝物語を聞かせてくれた。
そうして祖父の声を聞きながら、安心して眠りにつくのが冬太の常だった。
「むかしむかし、あるところに……」
大き過ぎず小さ過ぎずの声が、ゆっくりとした口調で物語を始める。
冬太はそれに耳を傾けながら、瞼を閉じた。
穏やかに小さな胸を叩く、祖父の手のリズムがまた、心地よかった。
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