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「寒い寒い吹雪の夜のこと。今日みたいに風がびゅうびゅう吹いていたそうだよ」  祖父の語りは、もう何度も聞いた話で、結末がわかっていても、不思議と飽きるということがない。  祖父の穏やかな声の心地よさが、そう思わせるのかもしれなかった。 「戸を叩く音がして、開けてみると、若い女が戸口に立っていた。 『旅の者ですが、今夜一晩泊めてくれませんか』  そう言うから、若者はどうぞどうぞと家に招き入れた。 『この吹雪では寒かったでしょう。いろりにあたってください。温かい汁をどうぞ。』  そうして若者は、旅の女を一生懸命もてなした。 『丁度湯を沸かしたところですから、どうぞ温まってください』  寒かろうと思って若者は女に言うのだけども、女は湯が熱いから水でうめてくださいと言った。  何度うめても女がまた言うから、そんなにぬるくしては体が温まりませんよと若者は言って、女を風呂に行かせたと」  まどろむ冬太の規則正しい呼吸を感じながら、祖父は話を続ける。  子供特有の温かな体温が心地よく、愛しかった。
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