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頬に傷がある男が丘の上に立っている。
夜明け前。
その姿は闇に覆われて、はっきりとは目測しがたい。
ただ、彼が見下ろしている村、『ジダンダ』の者で無いことは確かだ。
夜目にも明るい赤髪がそれを物語っている。
夜が明ける。
男に動きはない。
その姿は今しがた昇ってきた一つめの太陽によって、徐々に鮮明になってゆく。
死人のように白い肌。
それと対照的な、赤く、風によって無造作にとなびく髪。
黒いマント。
身の丈ほどもある大剣。
スッと高い鼻。
尖った耳。
髪と同じ、赤銅色に光る眼。
そして、頬に負った傷。
…エルフ。
男は相変わらず村を見下ろしている。
男の唇が微かに動いた。
口角を持ち上げ、微笑むかのようにした。
だが実際は違う。
ドロドロとした殺気が彼の目から、口から、そして傷から放たれていた。
積年の恨み。
長年の忍耐。
…発見の喜び
風の様に
男は消えた。
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