序章~覚者の夜明け~

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「……ッ痛!」 黒髪黒い眼、まだ幼さの残る少年が、突然襲い掛かった激痛で ベッドのシーツを跳ね退けて飛び起きた。 「…な、んだ…この痛み…!…ッ痛…」 少年は頭を抱えるようにする。 「…く…ぁ…頭が…焼けるよう、だ…」 少年は声にならない悲鳴を上げつづける。 ベッドで身をよじる。 歯を食いしばる。 「…ヤ………め……ロ………………」 『声』が響いた。 少年にはそれが彼の耳に届いたものなのか それとも彼の頭の中の声なのか 判断する余裕が無かった。 既に痛みが彼の頭を引き裂かんばかりにしていたからだ。 「…ヤメ…ろ………オれ…の………ノだ…」 「オレ……の…モ…の……だ…」 「…俺……ノ…エモの…だ……」 「俺の獲物だ!!!」 少年はビクンと体をのけ反らせた。 頭は割れるように痛む。 ただこの冷や汗は、痛みによるものではない。 もっと、何か、ねっとりとした……? 「痛い…痛い…!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃ!!!」 少年は叫んだ。 気が狂ったかと、自分で疑うほどに。 赤子の産声のような悲鳴。 遠退く意識。 微かに耳に残った声。 女の声。 悲痛な、女の。 「……う……すか」 「大丈夫ですか!?しっかり!」 少年の意識は闇に飲まれた。
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