薬という名の毒

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その時、ドアからノックの音がした。 「誰か来ましたよ?」 「おかしいな。こんな夜中に、誰が…」 と言いつつ、とりあえず返事はしてみる先輩。 「どなたでしょうか?」 「すみません。私、隣りの研究室の者ですが」 「あぁ、荻研究所の。どうしました?」 「なにせ新人なんで、場所が分からないんですよ。ごみ捨て場はどこですか?」 思わず鍵をあけようとする彼に、すかさず後輩が制した。 「ダメですよ。僕らは今、大事な実験の最中なんですから」 「そうだった」 先輩は思いとどまった。 「残念だけど今、手が離せないんだ。1階の事務室に尋ねてくれないか?」 「分かりました、ありがとうございます」 そのまま声の主は去って行った。 「あんな声の人、いたかなぁ?」 「新しく所属した人じゃないかな。うちは0人だったけど」 再びノックの音がした。 「先程はどうもありがとうございました。お陰で場所が分かりました」 それはさっきの新人だった。 「おや、お礼の挨拶らしい」 「今度は僕が出ましょう」 そう言って彼はドアのそばへ近付いた。 「いえいえ、あれくらいで良ければ」 「そのささやかなお礼と言ってはなんですが…」 外でゴトリという音がした。 「この24インチ最新プラズマテレビを置いときますね」 「え?!」 思わず扉を開けてしまった後輩。そこには黒ずくめの覆面男性が、拳銃を携えていた。 「…って言うとでも思ったかぁ?!」 「うひゃぁ!」 男は大量の荷物を抱えながら、部屋に転がり込み、鍵を閉めた。 「ちょっと大人しくしてろよな?」 チラチラと拳銃を光らせるその姿に、後輩はすっかりパニックになっていた。 「『開けちゃダメ』って自分で言っていたじゃないか。…それで、テレビは?」 「そこだ」 そう言って男は、そばに置いていた24インチ最新プラズマテレビをあごで指した。 「これはこれは、立派なテレビジョンだこと。早速接続しよう」 重そうなテレビを担ぎ、部屋の端に配置し始める先輩。男もそれを止めようとしないあたり、ただの強盗という訳では無いらしい。
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