桟橋

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僕はそれまで僕なりの規則正しい生活を過ごしていた。 それは習慣というよりも、僕の視界に入る物の事だ。 山と小さな川と畑と田んぼ、祖父母がいて同じ集落に住む何人かの老人たちと、3日に一度の割合で町からやって来る引き売りの夫婦、僕の両親からの現金書留を届けに来る郵便配達.... カラスや雀、昆虫と蛙....時々見かける狸の親子。 そういった....ここで見ても何の違和感も感じない、まさに風景の一部になり得る物だけが僕の角膜には焼き付いていた。 それだけに、この出来上がった一枚の写真の中に『君』が入り込んで来た事は僕を容易に混乱させた。 僕の指定席で君は寝そべっていた。
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