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部屋に入った時、寒気を感じた。
風邪を引いたようだった。
僕は一度部屋を出て母屋に行き、祖母に風邪薬を貰った。
「こっちで寝る?」
祖母の気遣いを一言で断り、部屋に戻って布団に潜り込んだ。
夢を見た。
僕は桟橋に腰掛けて、君を見ていた。
君は僕の傍らで何かを歌っていた。
風が吹き、君の髪が僕の頬をくすぐると、君はその大きな瞳を僕に向けて笑顔を見せた。
....
夕べと同じだ....
何だろう....
夢でまた君に逢えた事がすごく嬉しく思えた。
祖母が食事を運んできた音で目が覚めた。
「良かった....大した事ないみたいだね....」
祖母は僕から体温計を受け取るて嬉しそうに呟いた。
「ばあちゃん....」
それまでほとんど話しかけた事のない僕の口から自分を呼ばれた祖母は驚いたように僕を見た。
「ばあちゃん、この村に僕くらいの子供っているの?」
何故そんな事を言い出したのか自分でも分からなかった。
僕は心のどこかで夕べの出来事を夢にしたくなかったのかも知れない。
「子供....この辺りにはいないけど湖の向こうなら何人かいるはずよ....分校もあるしね。」
分校と聞いて少し機嫌が悪くなった僕が黙ってしまうと、祖母はそれに気がついたのか畑に行くと言い、部屋を出て行った。
どうして....
こんな風になってしまったんだろう....
何が悪かったのか分からない。
僕はまだ大人じゃないから....
そんなに上手に生きられない....
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