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いつも通り食堂の手伝いをしていると、ふと不思議な気配を感じ振り向いた。
そこには、日も落ちたと言うのにフードを目深に被り、何処か人を寄せ付けない雰囲気を漂わせた旅人がいた。
(確かベルメキアからの…)
その旅人の事は覚えていた。
はじめアレンはこの旅人を随分怪しんだものだ。
フードを被り、顔さえ良く分からない。
そんな旅人を怪しまない方がおかしいとは思うが…
それでもアレンがその旅人を泊めたのは、ベルメキア出身だと判ったからである。
「どちらからですか?」
の問いに
「…ベルメキア」
と女性の声が小さく答えた。
ベルメキアからの客など、ここ数年記憶に無い。
(もしかしたらベルメキアの話が聞けるかもしれない!)
と淡い期待を持ったのだが…
その一言以来、声さえ聞いていない。
もう5日程経つだろうか?
初めは何度か話し掛けていたが、一度も相手にされた事は無かった。
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