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中国の春秋戦国時代…
楚国の宰相は天下に有名な宝玉、「和氏の壁(かしのへき)」を無くしてしまった。
その宰相は、多数の門人や食客を養っており…
その中に張儀という者がいた。
彼の家はひどい貧乏であったため…
皆、張儀が盗んだと噂した。
楚の宰相は、張儀を捕らえ…激しく拷問したが…
彼は『盗んでいない』の一点張りだった。
数百も鞭打たれた彼だったが…
どうしても罪を認めぬ為、釈放された。
<実際…彼は盗んではいなかったのだから、自白等も出来る訳が無かったが…>
彼は、身体を包帯で巻かれただけの簡単な治療をうけ…
その身体を雨漏りの酷い、粗末な家の中に横たえていた。
『あんたは変な本ばかり読んで…あちこちでデタラメばかり言っているから…』
横たわる彼の側で、連れの女が言った。
『だからとうとう、こんな事になったのよ。あんたが真面目に働いていたら…あたしって…ほんと、運がないわ…』
女はそう言い、唸る張儀を見遣り、ため息をついた。
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