第二話…三百野人。恩を忘れぬ者達

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穆公は改めて、野人達に顔を向けた。 『そなたら、官職につきたい者がいるか?』 先ほどの野人が答えた。 『いえいえ、わしらは怠惰に慣れております故…』 『ふむ、ならば…金を…』 穆公のこの申し出も、野人達は笑顔で首を振り…断った。 『そなたら、何もいらんのか?それではわしの気が済まぬ』 困り果てた穆公に、あの野人が言った。 『どうしても賞されるおつもりならば…あれを…』 野人はそう言って、恵公を指差した後、自分のヒゲを指差した。 『ん…ほぅ!それで良いのか?はははは!』 穆公は野人のしたい事に気づき、笑った。 『はい、それで充分にて』 野人は刀を取り、恵公へと近づいた。 『や、やめろ!た…助けてくれ!』 縛り上げられ、動けぬ恵公の眼前で刃が煌めいた。 次の瞬間… 恵公の自慢のヒゲは…その顔から消えていた。 三百の野人達は、恵公のヒゲを謝礼として受け、穆公に別れを告げた。 そして… 秦の穆公は、一歩一歩… 春秋の覇者の道を邁進して行ったのであった。 【第二話…三百野人。恩を忘れぬ者達 end 】
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