第三話…名を貪った男。

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穆公の時代から二百年後… 呉の国の新王、晃絽(こうりょ)は…ある事に頭を悩ませていた。 彼は呉の王になるために…先代の王である僚を謀殺して、その一族のことごとくを誅殺していたが… ただ一人、長男の慶忌(けいき)は…難を逃れて…他国に亡命していた。 この慶忌と言う男… 武勇絶倫にして聡明な人物であった。 彼は、父である呉の先王の仇を討つべく…自らを鍛え、兵を募っていた。 そして…呉の国内にも、先王の治世を懐かしんでいる者が多く… もし、慶忌が呉に戻って来たのなら…彼らがこぞって慶忌に手を貸すのは必定と言えた。 呉の新王、晃絽の統治は盤石とは言えず…彼は絶えずに慶忌の動向に注意を払っていた。 そんなある日… 彼は腹心の伍子諸(ごししょ)に、ため息混じりで呟いた。 『誰か慶忌を取り除いてくれる者はおらんのか?』 『ふむ…慶忌は万夫不当の人物ですからな、なまなかな人物では務まりますまい』 『やはり…おらんのか…』 ため息をつく晃絽に、伍子諸はおもむろに言った。 『晃絽様…私の食客に一人、面白い男が居るのですが…彼ならば、もしや…』 『慶忌を倒せる男なのか?伍子諸よ、その男をすぐに呼べ!』 『は…かしこまりました。直ちに…彼の者をお連れ致しましょう』 伍子諸はうやうやしく拝礼すると、晃絽の目の前から下がった。
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