第三話…名を貪った男。

3/19
前へ
/104ページ
次へ
そして数刻後… 伍子諸は一人の男を晃絽の前に連れて来た。 『伍子諸よ…その男が…お前の言う面白い男なのか?』 『はい、晃絽様。この者が先程お話した男です、名は要離と申します』 晃絽はその顔に失望の色を浮かべた。 伍子諸が連れて来た男は… 貧相な顔をした小男で、あの武力絶倫の慶忌を倒せるなどとは… 晃絽にはとても思えなかった。 不興げな晃絽の顔色を見て取った伍子諸は、うやうやしく拝礼した後に口を開いた。 『晃絽様。あの武力絶倫の慶忌を倒すには…武では駄目かと…』 伍子諸は傍らに控える要離に目を遣った。 『かえってこの者のような…晃絽様が失望の色を浮かべる程に非力に見える男の方が… あの慶忌も隙を見せるかと思いますが…』 名参謀である伍子諸の言葉に… 晃絽は要離を見遣り…しばし考えこんだ。 『ふむ…伍子諸よ。お前がそう言うのであれば…その男にやらせてみよう。 で…要離とやら、おぬし…如何にして慶忌に近づくつもりだ?』 晃絽は伍子諸の傍らにはべる、うだつの上がらぬ小男に問い掛けた。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加