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晃絽の言葉に、要離は顔を上げ口を開いた。
『はい、晃絽様。彼の者…慶忌は身辺を怠りなく警戒し、その武力も絶倫で…頭脳もまた明晰です。一見すれば付け入る隙が無いように見えますが…それこそが、彼の者の弱点なのです』
『弱点とな?早よう、続きを申せ』
急かす晃絽に、要離はおもむろに言葉を続けた。
『慶忌は自分に…溢れんばかりの自信を持っております。なので、そこそこに身元の確かな者でしたら…簡単に取り立てると…伝え聞いております』
『ふむ。だがそれでは…』
『はい、確かに側近になれるとは限りませんな。
なので晃絽様…
私の右手を斬り落とし、我が妻子を殺してくださいませ。
私はそれを用いて慶忌を信用させ…
彼の者に近づき、必ずや殺害して見せましょう』
この要離の言葉に、晃絽は眉をしかめた。
『何も罪の無い者に、そのような酷い事が出来ようか』
『晃絽様。忠義の為ならば我が妻子も喜んで死に向かいましょう、あなた様の為になるのならば…私は何でもいたします』
『うむ…』
要離の言葉を聞き考えこむ晃絽に…
伍子諸が口を開いた。
『要離は国のために、家を捨てると言っておるのです。
成功の暁には、家を興し要離の名を上げてやって下さいませ』
『うむ…致し方あるまい。要離よ…其の方の言う通りにする故…必ずや慶忌を討ち果たせ。よいな?』
晃絽は苦虫を噛んだような顔をしながらも…
要離が上げた策を了承した。
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