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要離の話を聞いていた者達は皆、彼の身の上に同情した。
『くそぅ、私に力が無いから…妻子の無念を晴らす事もできぬ…慶忌様のように、私に力があったなら…』
泣き崩れ、地面を叩きながら、そう呟く要離に…一人の老人が声を掛けた。
『お前さんが言っていた匹夫とは…呉の先代の王、僚様の王位を奪った晃絽の事かい?』
要離は顔を上げ答えた。
『そうだ、あの小人だ』
『やはりそうか…僚様の御子息の慶忌様は、今は衛の国におられる。
慶忌様は兵を挙げ、国を取り返そうとなさっておるようだ。
お前さんも行って身を寄せるがよいよ』
『慶忌様は衛の国におられるのか…』
『ああ、衛の国の都におわすらしい。お前さんの無念…晴らせると良いのう』
「そうか、衛の国の都か…後は慶忌を口説き落として、側近となり…隙を見て殺すだけだ」
要離は内心ほくそ笑みながらも…
老人に礼を言い、衛に向かう事にした。
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