第三話…名を貪った男。

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衛の都に着いた要離は、さっそく慶忌の元に向かった。 慶忌は、衛の王により広大な屋敷を与えられていた。 それは衛王が、亡命公子である慶忌を…呉の正当な後継者と見ている証でもあった。 『こりゃあ…凄いな』 屋敷の門前で感嘆している要離に、使用人の一人が声を掛けて来た。 『ここは呉の正統後継者、慶忌様の屋敷ですが…何か御用でも?』 『私は呉の要離と申す、慶忌様が兵を募っていると言う事を耳にし、馳せ参じたのだが…』 この言葉を聞いた使用人は、要離の姿をまじまじと見た。 『失礼ですが…その体では…』 『なるほど、確かに私には右手が無いな。だが…兵士だけでは戦には勝てぬぞ。私は軍師として参ったのだ。 私には晃絽を討つ秘策がある。どうか慶忌様にとりなしを願いたい』 堂々とした要離の態度に、使用人は『家裁を連れてくる』と言い残し… 屋敷の中に入って行った。
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