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趙国の宰相となった蘇秦は、かつて、ともに学んだ同門の中でも…
張儀と最も仲の良い学友だった。
張儀はそのよしみを頼り、趙に来た訳であったが…
蘇秦は忙しいのを理由に五ヶ月も、彼を待たせていた。
そしてこの面会の日…
蘇秦からの使いは、張儀にこう言った。
『我が国の宰相は非常に多忙で…食事の時間しか貴方に割けませぬ。それでよろしければ面会に応ずると…』
張儀に異論などあるはずも無く…
彼は賈舎人が仕立ててくれた着物をまとい…
かつての学友、蘇秦との面会に臨んだ。
しかし…
蘇秦がその日、張儀に供応した食事は…
奴隷が食べるのと変わらぬほど…粗末なものだった。
対して、蘇秦の食卓の上には…宰相と言う官位に見合う、山海の珍味や…贅を凝らした料理が並べられていた。
張儀は最初、我慢していたが…腹が鳴るのを我慢できず…
それに、旅館にも飯代がずいぶんと滞っていたため…
彼は恥を忍んで、箸を取った。
その供応された食事…具がほとんど入っていないスープを…
彼は恥辱とともに…一気に飲み下した。
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