第三話…名を貪った男。

9/19
前へ
/104ページ
次へ
『そなたが要離か、晃絽を倒す策があるとか?』 要離が部屋に入るやいなや、この屋敷の主である偉丈夫が声を掛けてきた。 「この男が慶忌か…」 要離は、慶忌の威風に息を飲んだ。 『は、ありまする…』 要離は、さも自信ありげに慶忌に言った。 『ふむ、その話を聞く前に要離とやら…貴公、その右手は如何いたした?』 『この右手は…晃絽に斬り落とされたのでございます、私の妻子も…あの匹夫めに殺されもうした』 要離は考え抜いた筋書きを、慶忌に話した。 『ふむ…それで、貴公は私に何を求めておるのだ?』 『この右手と殺された妻子の恨みと…あなた様の恨みを晴らすため…』 要離の言葉に慶忌は頷いた。 『うむ…なるほど。話はよく分かった。しばしこの屋敷に逗留するが良い、貴公を疑う訳では無いのだが…』 『解りました。いくらでもお調べを…私の言葉に嘘が無いのが解れば…お側に置いて頂けますな?』 要離の言葉に慶忌は頷いた。 『うむ、もちろんだ。私に二言は無い。今、呉に配下を遣わした故…話の続きは彼が帰ってきてからだ』 慶忌はそう言うと、手を二度叩き使用人を呼んだ。 『この客人を部屋に案内せよ』 彼は使用人にそう命じ、要離に部屋から出るように促した。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加