第一章

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「市くんに勝ったー!」 「うるせえ!手加減だし!」 「負け惜しみは格好悪いよ?」 そう言って日和が財布を手渡したとき、財布から1枚の紙切れがこぼれ落ちた。 「あれ?何これ」 床に落ちた紙切れ、それはプリクラだった。 「あー!待て待て待て!」 想平は素早くプリクラを拾い上げると、気まずそうに作り笑いをして財布へしまった。 「市くん彼女できたの?」 日和の唐突な質問に、想平は戸惑いながらも再び作り笑いをした。 「いや!あの!姉ちゃん!」 「お姉さんいたっけ?」 「あー!トイレ行きてー!やべ!我慢できねえ!じゃーな!」 「ちょっ…市くん!」 想平は教室を出て行ってしまった。 「彼女ができたなら、教えてくれたっていいじゃんか…」 その場に残された日和は、寂しそうにつぶやいた。
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