【3】盲目の刑事

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<警察署> 署内に朝の放送が流れる。 刑事課のフロアでは、珍しく全員が集合し、これまた珍しく朝礼が開催されようとしていた。 課長の富士本 恭介(ふじもと きょうすけ 42歳)が落ち着かない様子で前に立つ。 『え~。おはよう!!』 朝の挨拶などしたことのない課長の勢い余った大声に、誰も対応できず、シラケ返る課内。 『おい、何とか言えよお前ら。全く、挨拶もろくにできねぇのか?』 照れ隠しに悪態をつく。 『ボス、今日は何なんですか?』 『とうとう「これ」ですか?』 若手の宮本 淳一(みやもと じゅんいち 25歳)が首を手で切り、いくらかの笑いをとる。 『バカヤロウ、ジュン。そうだったら、今頃こんなとこにいないさ。ああ面倒くさい。』 少々がさつではあるが、正義感と頭のキレは評判のボスである。 『課長、どうやらお見えになった様ですわ。』 署内一美人刑事の鳳来 咲(ほうらい さき 30歳)が、パソコンで館内モニターを見ながら告げる。 刑事課のドアが開いた。 一同が一斉に、入り口に立つ、黒いサングラスの女性を見る。 その雰囲気を察した彼女。 『お早うございます。遅れて申し訳ございません。』 深く頭を下げた。 『いいからいいから、こっちへ来て。サキ、彼女を。』 迎えに行こうとする鳳来よりも早く、彼女はスティックで足元を探りながら、スタスタと前へ歩いてきた。 一同が戸惑いざわめく。 『静かに! え~、本日から、ここに配属された、姫城 紗夜(ひめしろ さや)君だ。』 ざわめきが大きくなった。 これが、盲目の心理捜査官 紗夜(24歳)のデビューであった。
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