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そんなことを考えていたら、次の授業の先生が教室に入って来た。秋人くんも悩んでいるのがバカらしくなったのか授業の準備をいそいそと始める。
ああ、結局休憩時間は僕の話で潰れてしまった。それにしても、恋……か。
何時か僕にも普通に恋が出来る日が来るのだろうか。秋人くん曰わく、恋は素晴らしいものだと言う。
恋をすると、その彼女(ひと)のことを考えるだけで胸がキュッと紐に縛られてように窄み、胸の動悸が――ドキドキが止まらなくなるらしい。目蓋を閉じれば自然と顔が浮かび上がり、四六時中その彼女のことが頭から離れないらしい。
今の僕はどうだろう?
試しに目蓋を閉じてみる。浮かび上がるのは闇のように黒い世界。まるで、僕の心を映しているかのような錯覚に陥り、慌てて目蓋を開いた。
何時か、僕をこの暗闇から救い出してくれるような女性と邂逅したいものだ。僕はそう思いながら先生の話に耳を傾けたのだった。
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