第一章:ターゲットを探せっ!

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   時は過ぎ、お昼休みに突入している。  僕と秋人くんは、何時ものように中庭に唯一ある大樹の根元でお弁当を広げていた。秋人くんは購買部でお昼を買うのが通念で、お弁当を広げているのは僕だけなのだから語弊があるかもしれないけれど。 「……あっ」  僕がサンドイッチと格闘している間、隣で何だか紫色のジャムが混入しているパンを銜えながら秋人くんが間抜けな声を漏らした。それでも様になるのは秋人くんの特権だろうか、羨ましい。  何で秋人くんみたいな人が僕なんかと一緒にいるのだろう。何て不毛なことが一瞬脳裏をよぎったが、考えるだけ無駄だと悟った。  僕は秋人くんじゃないんだから分かるはずがない。  気を取り直し、どうしたの? と秋人くんに訊ねてみると、秋人くんは視線で僕に「あっちを見ろ」と伝えて来た。いや、そんな気がしただけだども多分合っていると思う。  そんな訳で、僕は秋人くんの視線の先に自分の焦点を合わせてみた。
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