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「えっと……何が?」
「だから、あいつが……いや、やっぱり何でもない」
ますます頭がこんがらかる僕は、いち早くこのモヤモヤにも似た異物を取り除きたく問いかけた。だがしかし、秋人くんは途中まで何かを言いかけ、それを押し殺し燕下してしまった。
ますますモヤモヤが募る。こうもはっきりしない秋人くんは珍しいのだが、一体何を見たのというのだろうか。
「悪い、俺の勘違いだったみたいだ」
「そう、……ならいいけど」
そう言う秋人くん。しかし、その瞳は愉しげに細められていた。それはまるで、お気に入りの玩具が手には入った子供のように愉しげな表情で。
ぶるりと、背筋に冷たいものが走った感覚がした。こんなに愉しそうに笑む秋人くんを見るのは初めてだ。しかし僕は、何か良くない予感が脳裏を掠めて行く気がして不快に感じた。
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