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「体調が悪いなら言えよ?」
「ううん、大丈夫。少し疲れているだけだからね。ありがとう」
やっぱり秋人くんには言えない。細かな変化にも気付いてくれる優しい秋人くんだからこそ、伝えた後のことを考えると僕には怖かった。
「そうだヒカル。悪いけど今日の練習はなしな。用事があるんだ」
放課後、秋人くんは毎回僕の魔法練習に付き合ってくれている。恋をしなければ魔力が生まれないのだが、恋が分からない僕からしたら『恋をした』というタイミングさえも分からない。
だから毎回、放課後は確認も踏まえて発現の練習をしているのだ。
「用事なら仕方ないね。分かったよ」
「悪いな。それじゃあ、また明日」
そう言うと、秋人くんは鞄を携え颯爽と教室を跡にしてしまった。去り際に、何処となくウキウキした様相を呈していたのは僕の気の所為だろうか?
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