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―Φ―
今日も彼は来るのだろうか。
そんなことを考えながら、ボクの足は自然と訓練所へと向かっていた。この学園の地下には魔法を練習する訓練所が広がっている。毎放課後、そこに向かうのが最近のボクの日課になっていた。
彼――曽根川くんを初めて見掛けたのも確かこの訓練所だった。それは前回の定期試験前に、鈍った魔法の業を思い出そうと訓練所に赴いた時のことである。
―Θ―
「こんなものかな……」
マジックドールと呼ばれる案山子のような白い人形――僅かな魔力を供給するだけで原型を取り戻す魔道具――がぷつぷつと黒い煙を上げる前で、ボクは一息をついていた。
周りの友達に較べると些か魔法威力が劣るのがコンプレックスであるが、今回はなかなかの出来だったと思う。ボクの十八番である火属性の魔法は、マジックドールの上半身部分を黒焦げにしていた。
この時のボクは、周りの友達と同じく確かに〝藤堂秋人〟くんに恋をしていた。
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