第一章:ターゲットを探せっ!

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   次の試験は平均を超えればいいな。  そんなことを考えながらボクは帰りの準備を始めていた。  前回の試験は若干平均を下回る結果で、それが少なからずわだかまりとして心の隅に漂っている。それを払拭したくて、意識的に〝藤堂秋人〟くんを目で追うように毎日を過ごして来た。  結果としては少し不満が残るが、ボクの実力はこんなものなのだろう。後は本番で全力を尽くすだけだ。そう言い聞かせボクはその場を跡にしようとした。 「――貫け、ヴォルテックス!!」  唐突にそれはボクの耳を突いた。  男の声か女の声か判別しづらい中性的な音色。しかしながら鈴の音のように美しく、空間を切り裂きボクの鼓膜を震わした声はボクの意識を一瞬にして奪い取った。  思わず視線を巡らす。しかし学園の地下に広がる訓練所はなかなかに広大で、砂利で出来た地面に突起物のような岩がゴロゴロと乱立している。その為、声の主がボクの視界に収まることはなかった。
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