第一章:ターゲットを探せっ!

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  「ヒカルさん、それは不味いですぜ?」  恋をしたことがない。その厳然たる事実に秋人くんは顔を歪ませた。しかしそれも無理もないのだろうなーと思う。  生まれてこのかた一度も恋をしたことがない、なんて言うのは秋人くんにとっては天地がひっくり返っても理解出来ない事象なのだ。  何故かと言うと、秋人くんは非常にモテた。  肩甲骨まで伸びた白銀の髪は絹のようにさらさらで、きりっとした切れ長の目蓋にはかくも美しき蒼玉(サファイア)然とした瞳が嵌め込まれている。  すらりとした鼻筋にきらりと光る白い歯。それを形成するシャープな輪郭は、それはもう甘いマスクを作り出しているし、極めつけと言ってはなんだけど、身長180もある秋人くんは性格も至って知的、かつ冷静。  秋人くん相手に恋心を抱く女子生徒も学年でそう少なくない。寧ろ、学年の半数を掌握していると言っても過言ではないと思う。  常に女性に囲まれた生活を送って来た秋人くんのことだ、勿論、色恋沙汰は欠かせなかったはずだ。
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