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「まあ聞け。ルックスは捨て置いて構わないんだ。要は誰かを好きになる。これだけで恋は完成する」
「誰かを……好きに」
僕は思考の海にダイブする。誰かを好きになれ、なんていきなり言われてもどうすればいいのか、僕の十六年という短い人生経験からは導き出せない。無論、導き出せたらここまで悩む必要もないのだけれど。
「そうだな……あの娘なんてどうだ?」
悩む僕を余所に、秋人くんは教室のある一点を指差した。そこには一つの机を囲み、多数の女子が朗らかな笑みを浮かべながらお喋りに華を咲かせている姿がある。
その中心には、これまた天真爛漫を絵に描いたような明朗闊達な少女が向日葵のような可愛らしい笑みを湛えていた。まるで闇に差す一筋の光のように幸せに満ち溢れた笑顔は、見ているこちらまで笑みを溢しそうになる。
何て幸せそうに彼女は笑うのだろう。僕は彼女を見ながらそう思った。
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